恋の教習所
そしてその時は・・・卒業までかなり時間がかかってしまったんだ。

出来なくて悔しくて泣いた事もあった。

「懐かしいでしょー。今日同じ様に卒業生がまた入校して来たから思い出してね。きみは覚えてるかな、と思って。」

「忘れないですよ!」

忘れるわけがない。

私の大切な思い出なんだ。

「このアドレスとかってまだ変わってないの?」

「はい。私あまりアドレス変えない人なんです。」

「そっか。じゃあ、連絡しようと思ったらこの番号でいいわけね。」


谷川教官、今なんて言った・・・?


連絡しようと思ったらって・・・また、連絡くれるのかな?


二輪の事で連絡が来た事はあった。
それはもう大喜びで、友紀にも報告したんだ。
何回かやりとりもした。

ただ、私が免許取れたら連絡が来なくなったんだ。
送っても返ってこなくなっちゃって・・・。
これでお終いかな、って思った事もある。

それでも私が就職した事で、また接点が出来た。

話が出来るだけでも、また谷川教官の学科が受けれる事だけでも嬉しかった。


それが・・・連絡って。


「連絡くれるんですかー?」

嬉しくなってしまった私はきっととびきりの笑顔だったはず。

「そりゃあ、同じ職員だし。教え子だし。連絡するよー。」

そう言って谷川教官も笑ってくれた。


同じ職員だから?
教え子だから?


気になる言葉があったけど、今の私には聞こえない。

一度途切れたと思った道がまた繋がろうとしているんだ。


「わぁーい!楽しみにしてますー。」

本当に嬉しかった。

「その雰囲気だよ。今きみは入ったばかりで気を遣っていて、話し方が違うけど、本当はそうやってのんびりした話し方でしょ。そっちの方がきみらしい。」

私の話し方まで分かってくれていた。

一応、気を遣って話をしていたんだ。
それを話しやすいように戻してくれた。


やっぱりこの人は凄い人。
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