夜色オオカミ




「それでも、親父は無い力を補う為に死ぬほど努力をしてる。

直感や鋭い五感は持たなくても……それを補って余りあるものにするだけの力をつけたんだ。

だからこそ、当主になれなくても……ここにいる皆があの人に一目おいて尊敬してる。」



そう語る十夜の顔は生き生きとしていて……



お父さんを尊敬してるのが心から伝わってくる。



「そんな親父の息子が真っ黒な毛色を持って生まれたんだ……!

真神では黒は数百年に一人くらいの奇跡の色だ。」



つまり、真っ黒な十夜の毛色は生まれながらにしての当主たる者の色ってこと……?



「…昔は大っ嫌いだったけどな。黒なんか……。」



「………?」



十夜はそう言うと、きょとんとするあたしを見てちょっと苦笑して



「出来て当たり前って思われるんだ。俺の努力じゃなくて……。

で、失敗すると間違いなく馬鹿にされる。

黒いくせに…って……」



「十夜……。」



それって、どれだけ辛いことだろう。



みんな《十夜》じゃなくて強い力の象徴である《黒い狼》を見てる。



どれだけの努力も無に返るような、そんな気持ちを……








十夜は抱えてきたんだね……。









< 100 / 472 >

この作品をシェア

pagetop