夜色オオカミ
慌てて窓を開けて乗り出すように下を見た。
狼の十夜は素晴らしい身のこなしで、あたしの部屋のベランダにやって来た。
「どうして……?」
あたしは目の前に十夜がいることが未だに信じられなくて
ポツリ…そんなことをつぶやいていた。
だって忙しいはずなのに……。
どうして、来てくれたの?
「…………。」
十夜は煌めく夜色の瞳でじっとあたしを見つめると
「…祈咲が泣いてる気がした。」
「………っ!!」
だからその直感を信じて……あたしに逢いに来てくれたの……?
「泣くなら………俺の腕の中で泣け。」
「………!!!」
一人で泣いてんじゃねぇよ…その言葉に、弾かれたみたいに
世界で一番安心できる…その温かな腕の中に飛び込んだ。
「……っ!…十夜ぁ…!」
「祈咲……。」