夜色オオカミ




あたしは、それを…あまりに切ないことだと思った……。



ママに知らされることなく消えたあたしの姉妹……。



つまりはその子が……



「…消えた片割れが、紫月の《運命の花嫁》……か。」



「………っ!」



成長することもなく消えてしまったその子こそが……紫月さんの《運命の花嫁》……。



あたしとの……繋がり、だったんだ……。



「《バニシング·ツイン》は稀に残った胎児が片割れを吸収する事がある……。

祈咲に《キメラ》(二つの遺伝子情報をもつ者のこと)の可能性はないか?」



「……えっ!?」



よくわからないそれにまたドキリ!と心臓が跳ねた。



「いえ、それはあり得ないことと思われます。

姫君の出産後の検査内容は全て正常のものでしたので……。」



橙伽さんが淡々とそう答えると、十夜はまた難しい顔で眉間にしわを寄せた。



「俺達にあるのは魂の繋がりだとされているからな……。

おまえが俺の《運命の花嫁》だったことで…消えた双子の片割れが魂の欠片でも…

おまえのナカに残していたのかも知れねぇな……。」



「……魂の、欠片……。」











ポツリ…つぶやいて



ポタリ…涙がこぼれた……。









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