夜色オオカミ
優しい気遣い
自分の部屋で一人…机に向かって学校の課題のプリントをぼんやりと眺める。
「なんか、やる気でないや……。」
シャーペンを転がして、パタリ…机に突っ伏した。
あれからあっという間に二週間が過ぎた。
真神の人達は何かとあたしに気をつかってくれるし、ここの生活にも馴染んできた。
十夜とはずっと一緒なのかと思いきや、真神家という代々続く名家の次期当主の彼は毎日驚くほど忙しい。
…主に紫月さんのことで走り回っているみたいだった。
紫月さんは…あれから何の接触もないままだ。
あたしには常に紅ちゃんと蒼ちゃんがついていてくれて、真神家総出で守ってくれているようだった。
だけど……やっぱり、恐い……。
人狼がもつ、計り知れない特別な力
――――直感。
前回も紫月さんは周りの目を掻い潜り、あたしに接触してきた。
あの時は十夜の判断であたしは助かった。きっと力の差は十夜に勝る人はいないんだろう。
でも、目の前に現れるくらいは…きっと簡単なんだ。
『お会いしたかった……憎くて、愛しい……花嫁……』
不意にあの時の声が脳裏に蘇って、あたしは思わずぎゅっと自分を抱き締めた。