夜色オオカミ
――――ポタ…ポタ…ポタ……
大きな狼にくわえられてぐったりとした小さな身体から落ちる紅い雫……。
落ちたそれは地面に生える白い花を真っ赤に染め上げた……。
「いや……!!」
――――ドシャ……!
それを吐き捨てるように放り投げ、紫の狼は挑発的な目をあたしに向けた。
「蒼刃…!!蒼刃……!!」
「…キュゥ……」
紅ちゃんが必死に蒼ちゃんに呼びかける。
蒼ちゃんからは絞り出すようなか細い声しか出なかった……。
あたしはもつれる足を必死に動かして蒼ちゃんを膝に抱いて傷口を手で押さえた。
手はあっという間に紅く染まった。
「紫月……!!信じてたんだぞ……!!!」
「ダメ……!!」
紅ちゃんがあたしの制止なんて聞こえもしない様子で、紫月さんに向かって駆け出した。
「……ゃ…めて…やめてーーーっ!!!」
容赦なく開かれた紅い口と白く輝く鋭い牙を
…あたしは一生忘れられない。
あの子達は、……信じて、いたのに。