夜色オオカミ
離れていても
ゆっくりとあたしに向かって伸びた手が
「…………っ。」
頬に触れる直前にピタリと止まり、紫月さんが深い紫色の瞳を微かに見開いた。
「…………?」
突然のそれに、身構えていたあたしは急な変わりように困惑した。
「なるほど。忌々しい黒き狼め……。
黒き狼に抱かれたな……?」
「………!!?」
眉間にしわを寄せた不機嫌な表情で、まるであたしを見たくもないって態度だった。
そうか、この人も人狼だから……
――――十夜の香りがわかるんだ。