夜色オオカミ
「それまでゆっくりくつろぐといい……。
出来る限りのもてなしをしよう。」
「そんなのいらない……!
あたしはすぐに十夜のところに帰るの……!!」
余裕綽々に笑みすら浮かべる男に無性に腹がたった。
「元気があって何よりだ。
ぐずぐずと泣かれたのでは堪ったものではない。」
「………っ。」
あたしが喚いてみたところで、この人は何も堪えやしない。
嘲笑うような笑みを残し、紫月さんはさっさと部屋を出て行く…そして、ガチャリと扉に鍵がかけられた。
「………っ。」
ぎゅうっと握りしめた拳が震えていた。
悔しい……!
あたし……っ
――――なんて無力なの……!!