夜色オオカミ
あまりにかたく噛み締めた唇に
じわり…鉄の味が広がった。
それに、
――――十夜に怒られる……。なんて、そんなことがフッと思い浮かんで
あたしの脳裏に、
眉を寄せてしかめっ面の十夜の顔が浮かんだ。
同時にあたしの身体から力が抜けていく…………。
固く握りしめて強張っていた手をゆるゆるとほどき、微かにヒリヒリ痛みだした唇を触った。
「…こんな傷見たら、心配するね………。」
あなたはあたしに、どこまでも過保護だもの……
きっと眉を寄せて……
『馬鹿なことして傷つけんじゃねぇ…』
そう言って怒るんだよね?
そうだよ………。
あたしはぜんぶ十夜のモノだもん………。
十夜のあたしに馬鹿なことしちゃいけないんだから………!
自分自身をぎゅっと抱きしめた。
そしたら、紫月さんが言った言葉が蘇った。
『…黒き狼に抱かれたな………?』
――――あぁ…そうだ……。
そうだったよ………十夜……。
離れていても……
――――あたしはあなたに守られた。