夜色オオカミ
白き花の夢
――――ガシャ……!
「……っぅ…!」
忌々しい足枷をわざと音をたてて引っ張った。
自分の足が擦れて痛いだけで、そんなことをしても苛立ちは増すばかりだった。
はぁ…と小さく溜め息をもらす。
ここに連れて来られてからどれくらい溜め息をついただろうか。
少なくとも数えきれるだけの回数はとうに超えているってことだと感じる。
紅ちゃん…蒼ちゃん……。
可愛いあの子達のぐったりとした血塗れの姿が脳裏に焼き付いて離れない。
こうして度々それが頭の中に蘇った。
「………っ!!」
もしものことがあっていたら……!
悪い考えに堪らず涙が溢れて視界が揺らいだ。
それに乱暴なくらい頭を振って涙をぐいっと手で擦った。
そんなわけない……!
あの子達は可愛い顔をして強いから、絶対に死んだりなんかするわけない……!
人狼は強いんだもの……!!
悪い考えばかりに囚われるなと自分を叱る。
きっと、十夜や橙伽さんが駆けつけてくれたに違いない。
そう…ひたすらに思って、胸の前に手を組んで月に祈った。