夜色オオカミ
「まぁ、見ての通りよ……。
もう2、3日辛抱したら退院するから、
変に気にしないのよ?」
「………!」
張り付く灰斗をうっとうしそうに手で突っぱねながら
萌花はあたしの顔を覗き込んで笑った。
「あ…!そうだぞ!?
姫君ちゃんが気にすることはなんもないんだからな!」
それに灰斗もハッとしたようにあたしに振り返り力強くそう言って大きく何度もうなずいた。
「そうよ。祈咲のせいなんてことはないの!
あたしだって不覚にもこの灰色狼に関わる立場にいるんだから……無関係ではいられないわ」
油断をしてた自分の落ち度だと…きっぱりとそう言った萌花は、
ひどい目にあったにも関わらず……以前の萌花よりも強く見えた。
「萌を守りきれなかったのは俺の甘さだ。
もう二度とこんな目にはあわせない……!」
「………!」
灰色の瞳には強い確かな決意が込もっていた。
「………期待してるわよ。」
萌花はそんな灰斗を信じきった、あたたかな眼差しで見つめていた………。
「ありが……と。」
「「………!」」
うつむいた精一杯の小さなたった一言に、二人は優しく笑ってあたしの頭の撫でてくれた。
どうしても自分を責めずにはいられないあたし………。
二人の優しさや人狼と花嫁の強い絆に
あたしの頬をあたたかいものがつたい……ポタリと病室の白い床に落ちた………。