夜色オオカミ
「もう、やめろ……!
これ以上仲間を傷つけるな……!!」
悲痛なまでの進撃な声で十夜が叫ぶ。
紫月さんは、感情の見えない冷たい顔をして…振り返った。
「何故だ……?
君ならば私の気持ちが、わかるはずだ。」
「何……?」
――――ザァーー……
風が二人の間を通り抜け…生ぬるいそれに微かな血の匂いが交ざる。
「いいや…、わからないはずがない。
おまえは全てのことに強い力を持って生まれた《黒き狼》なのだから……。
私と同じように花嫁を失えば、おまえはきっと私と同じことをする。
おまえこそが………その血を持っているじゃないか……?」
「…………!?」
「………真神咲黒(マガミザクロ)……。
16年前――
真神の歴史から消された男を………知っているかな……?」
獲物を追い詰めるかのように、紫月さんがゆっくりと囁いた……。