夜色オオカミ
月夜の狼
――――その夜
「どこに行っちゃったんだろ……。」
あたしはパタパタと廊下を歩き、姿の見えない十夜を探していた。
『私も知らぬ事実です。』
あの後、
橙伽さんはあたしの話しを聞いて、神妙な顔をして首を振った。
側近である橙伽さんすら知らないことなんだと…改めてその秘密の大きさを実感させられる。
十夜は、どう思ってるんだろう……。
十夜の気持ちを考えて胸が痛い。
廊下を歩きながら、庭に出る硝子戸からふと外を見た。
「………!…十夜…。」
視線の先に、見つけた姿。
縁側に座った十夜は
月に向かって顔をあげて、瞳を閉じていた。
まるで降り注ぐ月の光を浴びてるみたい……。
一枚の絵画のように綺麗なその姿に
声をかけるのも忘れて思わず見とれてしまった…。