夜色オオカミ




兄にすら話したことのない告白だった。



けれど、一番大切な人に話した自分の心はずいぶんと穏やかで…



雛菊の告白を聞いた瞬間にすんなりと受け入れられた自分がいた。



『ヒナ、きっと僕らに子供は必要なかったんだ。

人にはそれぞれの境遇に意味があるんだよ。

僕らは僕らだけを愛し合って生きていける。

僕はヒナがいれば、きっとずっと幸せだよ……』



『…………!!』








簡単なことだった。



私が雛菊の狼である上で、雛菊が私の運命の花嫁である上で……



必要のないことだから。













『あたし達は、お互いのためだけに生まれてきたのね……』









雛菊は涙を流しながら今まで見た中で、一番美しく微笑んだ。







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