夜色オオカミ
地を蹴って
蹴って蹴って蹴って……!!
まとわりつく木立が目を刺すのも気にもとめずに
やがて拓けた視界
『ハァ…ハァ…ハァ……!』
辿り着いた先に見えたもの―――
『何故だ……何故……!!!』
しきりにそう繰り返す
月明かりに照らされた兄の無防備な背中と
抱き止められているらしい…そこからのびる青白く細い足……
だらり…垂れた両の腕
あぁ……
間に合わなかったのだな、と……
漠然と、思った……。