夜色オオカミ
『雪夜……
…何故、ユリは息をしない……?』
『……。』
振り返らぬまま、兄のものとは思えないほどの弱々しい声が自分にかけられた。
『どうしてだ!!
全てを…全てをかけたのに……!!』
痛ましい
哀れ
悲しい
血にまみれた狼……。
『…【我らは、神ではない……。
朽ちた魂の半分は器に姿を変えるが
但し―――………器の《まっとうすべき命の時と共に朽ちる》――】
僕らは神様じゃないから…命を与えることは出来ない。
この転生法は、身代わりの身体と命を…そのまま奪うんだよね…?』
『……雪夜…?』
力無く笑った私に、振り向くと…兄は瞳を瞬き、首を傾げた。
それはまるで、無垢な子供のような仕草で
身体に浴びた血がひどくちぐはぐなものに見えた。
『だったらヒナじゃダメだよ……兄さん。
ヒナの身体は再発した癌に全身を蝕まれて…
明日も無いほどの寿命だったんだから。』
『………!!?』