夜色オオカミ
『ヒナ…ヒナ……』
固く閉じられた瞳には渇いた…涙跡。
もう僕を見て
明るい声をたてて笑ってはくれないんだね……
顔にかかる細い髪を震える手でそっと整える。
首筋の噛み傷から流れた血が白い頬を鮮やかに染めた。
愛しい
愛しい人……。
奪われた。
大好きだった……兄に。
涙で霞む視界を上へと上げる。
映るのは、ただ虚ろな目をして立ち尽くす僕の血を分けた……兄。
初めて
あなたが、……憎いと思った…。