夜色オオカミ
『泣いたんだ……。』
『………!』
ポツリ…
兄はつぶやいた。
それに、雛菊の瞳から頬にかけてついた渇いた涙跡に目を落とした。
『ユリが……泣いたんだ。』
『……ぇ……』
再度、雛菊のその跡を見て…今度はしっかりと兄を見た。
『ユリが…ほんの一瞬、この腕に確かにいた……。』
兄は精彩さを欠いた瞳で汚れた手の平を見ていた。
この涙は…白百合のものだって……?
にわかに信じられない
けれど、兄は続けた。