夜色オオカミ




『………!』



ゆらり…



よろめくように、兄が動き…その姿は私が崇めてやまなかった黒き狼の姿に変わる。



恐ろしいほどにざわめく胸。



黒き狼は私を一度振り返り、



また…森の奥へと向き直る。






『駄目…だ……、兄さん……


それだけは許さない……!!』



喉を引き裂くような声が出た。









憎しみを



悲しみを



やるせないこの想いを









『…おまえを雛菊を…一族を……




……愛してたよ。



十夜を…頼む。』



『兄さん……!!!』













――――愛を、置いて













兄は森の奥深い谷底へとその身を投げた。



真神咲黒の名は



当主である父、真神夜一の命により私利私欲の為に一族を裏切った人狼として……抹消された。








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