夜色オオカミ

父と息子





「……これが、全てだ。」



お父さんは、ふ…と息をついて、長い長い昔話にピリオドを打った。



そして、あたしに向き直ると少しだけ眉を寄せて困ったように…笑った。



「祈咲姫、泣かせてしまったね…。」



「………っ!」



そっと伸びた手が、あたしの頭をいたわるように優しく撫でて…



その温かさに…あたしは両手で口元を覆い、余計に止めることが出来なくなった涙を流した。



出せない声の変わりに瞳は必死にお父さんの顔を見つめて頭を振った。



お父さんはそれをすぐに察してくれて、うんうんと笑顔で頷いてくれた。



その柔らかで優しい笑顔とは裏腹に



なんて…なんて悲しい過去……。










――――黒き狼の秘密は



全てを見失うほどに










花嫁を愛した……十夜の実のお父さんだった……。









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