夜色オオカミ
なんか言葉もないあたし達にお父さんは言った。
「だから《授乳》だよ。
粉ミルク飲まなかったんだよねぇ……十夜。
でも私に母乳なんて出るはずもないでしょ?
若いお姉さんに抱かれる度に泣いてねぇ…。おっぱいじゃなきゃ駄目なんて、赤ちゃんの頃から困った子だよ。」
「………っ!」
そのセリフにピクリ…あたしのこめかみが動いた。
そしてわけも解らず固まる十夜に剣呑な視線をチラリ…
「…十夜サイテー…。」
低~い声で軽蔑の眼差しもプラスで…一言。
「………!!?
待て……!!赤ん坊の話だろうがっ!?
なんだその目は…!?」
「………ふんっ。」
「~~っ!!!」
あたしは慌て始めた十夜にツンとそっぽを向いてやる。
「…懐かしいなぁ~。
毎日毎日それは泣いて喚いて…
空腹に耐えられなくなると渋々ミルクを飲んで寝るんだよ。
私は寝不足で…すっかり困り果ててねぇ…
ついに《典子(ノリコ)さん》に頼ろうと決意して…」
お父さんは横で騒ぐあたし達なんてお構い無しに思い出話を続けた。