夜色オオカミ
その姿は確かにどっからどう見ても普通の高校生。
さっき目の前で見た狼の名残はどこにもない。
まぁ―――普通よりちょっと…いや、かなり男前ではあるけど。
そんなことをチラッと考えて思わず顔が赤くなる。
彼はそんなあたしを不思議そうに見てたけど、
やがてゆっくりとその口を開いた。
「俺の一族には遥か昔に狼の血が混じったっていう伝説があってな…………」
「伝説…?」
その話しはなんでも………
遥か昔、不慮の事故により崖から落ちて死にかけた真神の先祖が
強い神の力を持った神の化身である狼からその血を分け与えられ助けられて……
気がつけばその血により自らも狼に変身する能力と神の化身である者の、特殊な力を得ていた――…と。
「………元々名前にちなんで《真神(マカミ=狼の古い呼び名)》、
つまり狼を神として奉ってた一族だったんだよ。
………それが始まり。」
「…………。」
あたしはただ黙ってその話を聞いていた。
真神十夜は、静かにあたしの瞳を見つめていた。