夜色オオカミ
予想はしていても自分の姿すらわからないこの場所に微かな不安を感じるから、自分と同じ声が耳に響いてきてほっと気が緩んだ。
『…やっぱり。
どうしてずっと出てきてくれなかったの?
あたし、あなたに逢いたかったのに…』
声を出せるからか、あたしは遠慮なくまるで恨み言を言うかのように拗ねた言い方をした。
『ふふ…。あたしも逢いたかったけど…
頻繁にあたしが祈咲の意識に現れたら、あたしのオオカミが気づいてしまうもの。そんな危険は侵せない。
…でも、ずっと傍にいるよ…?』
微かに苦笑をもらしたような心花の声は、困った妹のあたしに…諭しているかのように答えてくれる。
双子のはずのあたし達…。でもなんとなく、心花の方が姉だと感じてしまうのはあたしよりしっかりしているような雰囲気が彼女にあるからかもしれない。
そして前の時とは比べものにならないくらいはっきりと聞こえる声が何だか嬉しかった。