夜色オオカミ
あたしは急いで服を着て、シャツのボタンを留めようと手をかける。
「……っ。」
だけど、焦れば焦る程…緊張に指先が強ばり震えてうまく留まらない。
思いとは裏腹にあたしの身体は正直だ。
情けなくなってきたそんな時
あたしの横から、サッと手が伸びた。
「…大丈夫だ。」
「十夜…。」
十夜はあたしの服のボタンを留めてくれながら、しっかり服を着せてくれると、あたしの頬に手を添えて優しく笑った。
優しく黒い瞳を細めて笑う十夜に、身体の強ばりがゆっくりとほどけていく。
それは月の和かな光が石になった身体を元に戻してくれるかのようで…
まるで魔法のようだと思ってしまった。