夜色オオカミ
「何を言うかと思えば…笑えるな。
ここまできて綺麗ごとなどまっぴらだ。
継ぎの憎しみはおまえの番だろう…?
そうしていっそ思い知るがいい。
花嫁を失う失望感を…そして実の父と同じ轍を踏むといいさ…。
運命の勝者の転落…実に愉快だ……!」
ハハハ…!と馬鹿にするように笑い飛ばして…
けれど、十夜はそんな紫月さんを黙って見つめるだけだった。
その背中はいつもの様にピンと真っ直ぐに伸びていた。
表情は見えなくても、その広い背中が頼もしかった。