夜色オオカミ
あたしは覚悟をして歩み出た。
一歩足を踏み出すと、小枝を踏んだのかピシと軽い音がした。
「祈咲…なんで……」
十夜はあたしを見つめて酷く動揺してた。
紫月さんは間違いないあたしの姿を確かめると、その口をニィ…と大きく歪めた。
隙間から覗くぞろりと並ぶ赤黒い牙がはっきりと見えて、背筋がゾッと凍る…。
何度見ても…馴染めない。…あの血色……。
あの錆び付いた匂いまで甦るようで、嫌な記憶を振り払おうと頭を振った。