夜色オオカミ
怒りに満ちた紫色の視線が突き刺さる。
この視線をそらせば、たちどころにあたしの首にはあの鋭く尖った赤黒い牙が食らいついているイメージが頭の中を占めた。
「……!」
低い唸り声が響き…あたしの額を冷たい汗が滑った。
そんなあたしに、紫月さんの視線から隠すように十夜が身体を擦り寄せる。
ふわりと柔らかな毛皮に覆われた十夜の温かな体温を感じて、微かに緊張が緩み…固まった膝が折れそうになった。
「引け…。その器の首を今すぐに咬み折ってやる……!」
「……!!」
グワ…!と開けられた大きな口…赤い口腔に並ぶ牙がガチ…!と音を鳴らせ閉じられてビクと酷く身体が震えた。
「させねぇよ…。」
十夜は頭に血を上らせた紫月さんを制しながら前を見据えたまま口を開いた。
「…祈咲、ここに来た理由を話すんだろ?」
「……!」
…落ち着いたその声音に、……震えが、止まった。