夜色オオカミ




「十夜は…逃げたりなんかしない…!」



無感情な人形のような冷たい瞳の紫月さんに、それでもあたしは震えながら言い返す。



「……あぁ…そんなもの別に…どちらでも構わない。」



酷く疲れたように呟いて、紫月さんは



「もう後には退けぬのだ……。」



どんよりと何も見ていないような据わった目をして…小さな声でそう言いながら、一歩一歩近づいてくる。



「最後の代償はおまえの首に食らいつき…心花の魂を移せば…


私は…残された人の姿を―――手離す。

月の光を浴びるほんのわずかな間しか、人ではいられなくなる…。」



「……!?」










人の姿を……手離す…!?









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