夜色オオカミ
「遅れてごめんね?姫君。…若様が俺達を呼んだんだ。」
「……え?」
紅ちゃんが弾んだ声でそう言った。
「若様が遠吠えしただろ!『俺が行くまで祈咲を守れ』って!
でも大人に捕まっちゃってもたついちゃった。ごめんね?」
「……!」
だからちょっと咬んじゃった~と愉快そうに言った蒼ちゃんの答えにハッとした。
遠吠え…十夜はあの時二人を呼んでくれてたんだ…!
「あなた達は…本当にあたしの騎士だよ……!」
「「……!!」」
ぎゅっと後ろから抱きしめると、二人のしっぽが嬉しそうに振られた。
「若様がここにいたら面白いもん見れたのにな?蒼!」
「ほんと!ほんと!遅れてる罰に来たら二人で姫君にちゅーしてやろう?なっ!紅!」
はしゃぐいたずらっ子の声にまた力が沸く。
二人もあたしの両側に着くと冷めきった目をした紫月さんを見た。
「また子供が邪魔をしに来たのか…?」