夜色オオカミ
紫月さんの切羽詰まった声が鼓膜を震わす。
血に濡れた禍々しくも見える百合の上に浮かぶ色のない半透明な身体…
それはあまりにも不釣り合いな…まるで白い百合の精のような清らかな姿だった。
あたしにそっくりな顔…膝に届きそうなほど長いストレートな髪…まっさらな膝にかかるほどのワンピースを着て……彼女は笑ってる。
名前を叫んだきり…魂を抜かれてしまったかのように、紫月さんは立ち尽くした。
「……どぅ…して……?」
呟いたあたしに
心花は優しく優しく…微笑んだ…。
『…祈咲のオオカミが、あたしに力を貸してくれた…。
…ありがとう……十夜…。』
「……!」
あたしの後ろにたたずむ十夜に心花は深々と頭を下げた。