夜色オオカミ
振り向けば、十夜は静かに佇んでいた。
「…似てるな…。」
そう、フ…と笑ったかのようにあたしに向かって呟いた…。
頭を下げ続けている心花と、それを見る十夜の姿を…あたしはわけがわからず見比べた。
「どういう……こと…だ……?」
「……!」
…やっと聞き取れるほどの弱々しい声がした。
濡れたような瞳をした狼…
身に纏っていた鬼気としたものは全て剥がれ落ち…紫月さんの大きなその姿はあまりにも頼りなく見えた。
十夜はゆっくりと首を動かしそんな紫月さんに、まっすぐな黒い瞳をひたと向けた。
「…助けてくれと、頼まれただけだ。…大切な花嫁の姉にな…。」
「……!!」
実に事も無げに、十夜はそれだけを言って…ニィと口の端を持ち上げた。