夜色オオカミ




もう心を決めてしまった心花を…引き留める言葉が浮かばない。



そんな中…



よろよろと、覚束ない足取りで…



紫月さんが歩み寄る。



「嘘だろう…?やっと…やっと逢えたのに…

頼む…頼む……っ

聞こえなくとも、触れられなくとも構わない……!!

もう何も欲張りはしない…っ


…いてくれるだけでいいから!!!



どうか…神様……!!!」



心花に…その先にあるものに…訴える。



涙で濡れた頬に心花が手を伸ばして…触れているように添えた。










『あたし…今度は、男の子に生まれたいな…。』



「……心花…?」



呟いて…見上げる紫月さんを見つめて彼女はクスリと笑う。



心花の姿が霞み始める…。



「やだ……!心花…!!」



声をあげたあたしを見てまたにこり…笑む。



『大好きな祈咲の子孫がいい。

そしてあたしがオオカミになって…花嫁のあなたを探すの…。

だから…紫月もあたしと同じ時に生まれるの。

あたしはきっとすぐに紫月を見つけてみせる。


…だから…約束しよう…?


今度こそ……ずっと、……傍に………いられる…ように…。


ねぇ、紫月…

何もあげられなくてごめん…ね……


想いだけは置いていく。ずっと、あなただけの…もの……。



………愛して…る……』



「待ってくれ………!!―――――心花!!!!」













サラサラと



キラキラと



光の砂になって…心花の身体が、……夜空に…舞った……。










美しすぎる彼女は



――――星になったんだと…思った。










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