夜色オオカミ
「おかえり~。」
教室に戻ると萌花がプラプラ手を振りながら待っていた。
「………ただいまぁ…」
あたしはちょっとひきつりつつ笑って萌花の後ろの自分の席についた。
「懲りないわねぇ?いい加減付き合いなよ。」
開口一番このセリフですか。
萌花は美人な顔でニヤニヤ笑う。
「だって、アイツ付き合う飛び越して嫁だよっ!?」
「本気っぽくていーじゃん~!
それだけ祈咲しか見てないでしょ?」
「…………っ。」
「顔はいいわ、背は高いわ、頭までいい上にスポーツも万能……。
噂じゃあかなりのお坊ちゃんだって言うし!
わかるだろうけど真神くんてちょーモテるのよ?
でも好きになったら一直線で周りにまるで興味なし!………すごくない?」
「…………。」
すごいのは重々承知だ。
転校初日から校内一のイケメンになった真神十夜は先輩達にまでめちゃくちゃモテている……。
おかげでますますあたしへの女子の皆さんの風あたりは厳しい。
チラリと萌花に視線をやれば、何をためらうのかと呆れたような瞳が言っていた………。