夜色オオカミ
――――ザッザッと遠慮なく枯葉や土を踏みしめて、足音まで不機嫌全開な声の主。
あたしの前に立つと、橙伽さんから引き離すように腕を引いて、自分の傍に立たせる。
「橙伽なんかと笑うな。」
「………。」
長身を見上げるあたしを見下ろしながら、眉間にしわを寄せ口をムッと引き結んで…精悍で美しい顔がワガママな子供のようになる。
ほんと、ヤキモチ焼きなんだから。
クスリと噛み殺せない笑いが漏れて…ますます眉間のしわが深くなった。
「…私にも花嫁がいることをお忘れなきよう。
全く、動けるようになった途端にこれでは姫君がお可哀想ですよ?
…若様。」
「うるせぇ。」
呆れた声をあげた橙伽さんを、十夜は苦々しい顔をして一蹴した。