夜色オオカミ
あの日――――……
紫月さんが十夜の首筋にあの紅い牙を埋めた後
紫月さんはその牙を十夜の首から抜くと…よろよろとふらつきながら離れた。
――――直後、
『……ゴホォ…ッッ!!!』
『……!!…十夜……!!?』
身体をビクリ!と震わせて、十夜は上体が跳ねるほど激しく咳き込みながら意識を取り戻した。
今まで出来なかった呼吸を必死に取り込もうとするかのごとく、荒い息をついて…
駆け寄るあたしに気がつくと、十夜は酷く咳き込みながらもあたしに手を伸ばした。
その強ばった手を泣きながら取って…十夜の身体にすがりついて、……泣いた。
力強く痛いほどに握られた手に、十夜の存在をまざまざと感じて涙が溢れて止まらなくなった。
『十…夜…っ!十夜ぁ…!!』
『き…さ……?
一体…どう…なっ……』
『し…紫月さん…が……っ』
『紫…づ……?』
泣きながら顔をあげたあたしは、十夜を助けてくれた人の姿を探した。
『……!』
そして、僅かに離れたところで紫月さんの濃い紫色の毛皮が目にとまる。
まるで十夜と代わるかのように
…ぐったりと、横たわった姿で