夜色オオカミ
あの時、紫月さんはきっともっと遠くを見てたんだ。
【「…だから、きっと長生きをするだろう。
……君と同じくらいの時を…」】
【「次は、けして間違えないと…誓う…。」】
――――その先の未来に希望を託して
【「……心花の、《母親》になってやって欲しい――」】
『……紫月さん……っ』
お腹にぎゅっと手をあてて…あたしは十夜に抱きついた。
…紫月さん…もう、あなたは心を決めていたんですね……。
二人は次の世での出逢いを誓いあった…。
いつか同じ時に生まれようと…
紫月さんのそれが早ければ…心花はそれだけ早く生まれ変わることが出来るかもしれないから…
十夜に自らの命を与えようと決意した紫月さんには、恐れも迷いもなかったんだ…。
狼の姿であるのに、僅かに微笑みを浮かべているような…
――――彼の穏やか過ぎる…“幸せだ”とでも言いたげな死に顔が……物語っていた。