夜色オオカミ
「…っ…ぶえっくしゅ……!!」
でかいクシャミをしてズ…と鼻をすする。
桜が満開で色んな花が咲く春だけど、俺は花粉症じゃない。
「何だよ…。
多分親父あたりが何か文句言ってんだな~…」
母さんうまく宥めといてくれたらいいな…。
それともあっちかな?…俺の教育係。
「双子だからって何で俺だけ二人も教育係がいるんだよ~。」
紅は乱暴で蒼は腹黒…。帰ったらシメられるんじゃねぇだろーか…。
「いやー…母さんの方のじいちゃんとばあちゃんかなぁ…。」
むやみに変身すんなってうるせぇんだよなぁ…。
…そんなことをぼやきながら、俺は四つの足で駆けていく。
親父譲りの黒い毛皮は風になびいて心地いい。
まるまる太った猫が家の塀の上で昼寝をしてた。
自分の生まれた季節である春は好きだ。
…だって出逢いの季節だろ?
高鳴る胸がドキドキと弾む。
何故か小さな頃からこの日をずっと夢見てきた。
もうすぐだ。
だから
きっと、見つける。
「待ってて……。
今、行くから。
…俺の、――」