夜色オオカミ
俺の前に立つこの男。
真神灰斗(マガミカイト)18歳。
俺の父方の従兄弟。
「家の奴らが噂しててさ~。若様が早々に花嫁を見つけたって……。
花嫁追っかけて転校までして
……まだモノにしてないってぇ~……」
「…………。」
――――俺の天敵。
にや~り笑うその口の端から八重歯がのぞく。
――――バキィ……ッ!!
そこ目掛けてぶん殴ってやった。
「いってぇ~~ッ!?……ちょ…!冗談!十夜ちゃ~んっ!?」
俺のマジな目を見た灰斗は頬を押さえたまま後ずさる。
「ちょうどいい……。
モノに出来なくてイラついてんだよ……。
相手しやがれっ!!」
「………あら~…。マジだった?」
――――ブチッ!
その言葉にもムカついて、更にジリっと間合いをつめる。
「ギャ~!ちょっと勘弁……!?」
――――バキッ!!
俺の拳は灰斗の顔の真横…柱にミシリと埋まった。
「……降参………」
灰斗は両手を上げたホールドアップの体制で自分の真横に決まった拳を青い顔で見ていた。