夜色オオカミ
「決めた!!」
いきなり立ち上がり、俺に向かってビシっと指差す。
「何を?」
「会わせろ!」
「………。」
――――バキッ!!
それに有無を言わさずぶん殴る。
「いってぇ!?何すんだよっ!?」
またも殴られて、灰斗は涙目で俺を振り返った。
俺は握りこぶしを作ったまま
「バカかてめぇ!?他人の花嫁に手ぇ出すなんか人狼の風上にもおけねぇ!!」
「ち…っ、ちがーう!!」
逆上する俺に灰斗は慌てた様子でブンブンと首を振った。
「じゃあ何だ!?」
俺は拳を握りしめたままジリジリと灰斗を追い詰めた。
「……直感だっ!!」
「………!!」
その必死の言葉に俺の拳がフッと緩み、変わりに確かめるように灰斗の灰色の瞳を凝視した。
「フン……。嘘は言ってねぇな」
それを感じとり改めて怒りが鎮まる。
「言わねーよ!俺達の誇るべき力で!!」
灰斗はいつになく真剣な眼差しを俺によこし、だから頼むとその目が言った。
「いつだ?」
俺の言葉に灰斗はニヤリと笑い
「一週間後だ」
自信たっぷりで八重歯を見せた。