夜色オオカミ
運命の人
「…放課後?」
「たいした用じゃねんだけど……」
朝のHR前の時間、教科書を机にしまっていたら十夜に声をかけられた。
あれからまた一週間が過ぎて、あたしと十夜は相変わらずな関係で………。
毎日『嫁になれ』と迫る男と
毎日『ちょっと待って!』と逃げる女なまま………。
好き…なのに………。
素直に可愛くなれない意地っ張りな自分がにくい………。
だってあの日から、目をあわせるだけで真っ赤になってしまうあたし。
気持ちをはっきり自覚してしまうと睨み付けることも出来なくなったものだから
いよいよ恥ずかしくてまともに顔すら見れなくなった………。
「祈咲?」
「………!」
ハッと我に返り、顔を上げると
「聞いてるか?」と、怪訝そうな顔をした十夜があたしを見ていた。
「ご…っ、ごめん……!えっと、放課後だっけ?」
慌ててさっき聞かれた事を確認した。
どうやら十夜は今日の放課後あたしに用があるらしい。
「ん……。平気か?」
でも何だか聞いてる本人の方が気が向かない感じなのは気のせいなのかな………?
制服のポケットに両手を突っ込んで机にもたれかかる十夜はどこか憮然とした顔をしてた。