新しい年の恋人 短編
「リクー…飯できたか?」
ジャージを着てリビングに行く。
「今作ってもらってる…」
リクの申し訳なさそうな声と、いい香りが鼻をくすぐる。
「は?」
瑞希が帰ったのかと思いキッチンをのぞきこむ。
「あ…」
何故かそこには、瑞希ではなく……、自転車の女がいた。
「あ、初めまして…」
その女は俺に気づいたのか少し頬を染めて緊張気味に挨拶をした。
なんでいるんだ?
そんな疑問が頭の中をさ迷う。
俺の考えてることがわかったのか、その女は自己紹介を始めた。
「あの…道川閖です!いきなりすみません……瑞希ちゃんに引っ越しの手伝いを……あっ…!」
閖と名乗るその女はフライパンに目を向けて料理を再開する。
自転車の女、閖。
……道川……瑞希の…引っ越し……手伝い………?
あの定食屋の娘か……。
引っ越しってこの女か。
道川の娘と言われてわからなくもない。
確かに小さいのはそのままだ。
ただ、すげぇ女らしく……綺麗になった。