新しい年の恋人 短編
「そうか…じゃあ、よろしく頼むわ」
断ったりなんてもったいねぇことできるわけない。
そんなことかっこつけてまでチャンスをなくすのはバカだ。
そういう俺に嬉しそうに元気に“はい”と返事をした。
そんな幸せムードの中に似合わない音が響く。
チャイムの音で、閖も俺も2人の雰囲気が崩れ現実に引き戻される。
「誰だろ…ちょっと出てきますね」
来客なんていないのに…なんて言葉を漏らしながら玄関へと向かう。
そんな後ろ姿を見て、また胸がときめいた。
…………女か、俺は。
「おぅ閖。久しぶり〜」
聞きなれた声に思わずドアを開け、玄関を見た。
「あ、ちゃんと兄ちゃん来たんだ」
「なんだよ…その言い方」
瑞希が意外って言う顔をして俺を見た。
「つか、瑞希もなんで来たんだよ」
「用事早くすんだから、手伝いに来たんだよ」
相変わらず小さいな〜と瑞希は閖の頭を撫でる。
その様子が姉妹に見えた。
なんでだ?
別に女らしくもねぇあいつがなんでこんな小動物みてぇな閖と姉妹に見えんだ?
まぁ…どうでもいいか。
俺には関係ねぇ。