新しい年の恋人 短編
俺は返信を打つのも時間がもったいないと感じて電話をした。
今すぐ逢いたくて。
声が聞きたいと思っているのに、電話の機械音が嫌なほど長く感じる。
『もしもし…?』
いつもより色気がある声が電話口にから聞こえる。
そんな声にドキドキしたが、落ち着こうと小さく息を吐いた。
相手に聞こえないようにちゃんと電話口から離して。
「もしもし?柯束香ですけど……」
『響夜さん…』
少し大きくなった閖の声に、無償に嬉しくなる。
電話してるっていうだけなのに、胸の鼓動は高鳴っていくばかりだ。
「今からでもいい?」
脈はいつもよりも速く打つ。
メールの話を切り出すと、閖は“はい”と素直に返事をした。
電話をしながら準備をし始めた俺。
“待ってて”と言って電話を切ると急いでジャージから着替えた。
ケータイと財布を上着のポケットに入れてキーケースを手にとる。
玄関の扉を開けて家を出たら、鍵も閉めずに隣の部屋のチャイムを押した。