新しい年の恋人 短編

「ねぇねぇ!名前…なんてゆーのぉ?」



鼻をくすぐる甘い香り。



声のした方をチラリと見るとかわいい顔した女がいた。



どっちかっていうと童顔。



だがその女は顔には合わないくらい、スタイルがいやらしく…そこら辺の男ならすぐさま惚れるだろう。



いろんな男を手玉にとってきたんだろうな。



「人に聞く前に自分が名乗りなよ」



名前なんて教える気もなければ知りたいなんて思わない。



それに俺は今こんな女は気にならねぇ。



頭に浮かぶのは自転車の女。



見たことあるような気がしてならなくて…。



知り合いの知り合いか?



いや、それならばもっと前に惚れていただろう。



じゃあ気のせいか?



そんな風に思いつつメニューを開いて飲み物を選ぶ。



「ごめんねぇ…あたしはシズクだよ」



目の前で俺に話しかける女。



はやく名前を教えてほしいと言うように俺を見つめる。



見ていなくても視界に入る女。



この女、鬱陶しくてたまらない。



< 3 / 33 >

この作品をシェア

pagetop