新しい年の恋人 短編
「ねぇねぇ!名前…なんてゆーのぉ?」
鼻をくすぐる甘い香り。
声のした方をチラリと見るとかわいい顔した女がいた。
どっちかっていうと童顔。
だがその女は顔には合わないくらい、スタイルがいやらしく…そこら辺の男ならすぐさま惚れるだろう。
いろんな男を手玉にとってきたんだろうな。
「人に聞く前に自分が名乗りなよ」
名前なんて教える気もなければ知りたいなんて思わない。
それに俺は今こんな女は気にならねぇ。
頭に浮かぶのは自転車の女。
見たことあるような気がしてならなくて…。
知り合いの知り合いか?
いや、それならばもっと前に惚れていただろう。
じゃあ気のせいか?
そんな風に思いつつメニューを開いて飲み物を選ぶ。
「ごめんねぇ…あたしはシズクだよ」
目の前で俺に話しかける女。
はやく名前を教えてほしいと言うように俺を見つめる。
見ていなくても視界に入る女。
この女、鬱陶しくてたまらない。