新しい年の恋人 短編
「てか兄ちゃん今日帰んの早くね?」
瑞希がリクが寝ている布団の隅で座ってマンガを読みながら俺に問いかける。
コーヒーを飲みながら瑞希に目線を向けた。
「リク寝たから?」
マンガを読み進めながら返事のない俺に言う。
そのときに瑞希のケータイが音を立てた。
マンガから目をはなさずにケータイを手にとった。
「兄ちゃん、ここって何号室だっけ?」
空になったコーヒーカップを置く。
「あ?315だけど…どうかしたのか?」
瑞希の意味不明な質問。
「いや316号室にさ閖が来んだよ」
聞き覚えのない名前言われても困るんだけど…。
「閖って誰だよ?」
再びマンガに目を向ける瑞希に声をかける。
「覚えてないの?あれだよ、あれ。家の近くに定食屋あったじゃん?あそこの娘。」
ふと記憶を蘇らせる。
「あぁ…」
小さいやつね、と言えば瑞希は読み終わったのか、マンガを机に置いて立ち上がりながら俺の意見に頷く。
「だから瑞希に手伝ってって…」
「へぇー…」
近所付き合いをよくしたいと思うわけでもない俺は正直どうでもいい。