近くて遠い君へ
決断の時



―――

師走に入りその忙しさは増す。


気がつけば年末。


あの日から何度か二階へ上がるけど、ミナちゃんと会うことはなかった。



「うお、もう4時かよ。

昼飯…、食えるヤツ食っとけよ。」

そう言って店長はフラフラになりながらバックルームへ入っていった。

それもそのはず、今日は朝から予約で埋まり、そのほとんどがカラーとパーマ。

そろそろ休みたいところだと思う。


店内見渡すが当分食えそうなヤツはいない。


「いらっしゃいませ。

ご予約でいらっしゃいますか?」


…こりゃもう夕飯確定だな。


「店長ご指名です。」


「店長?ご指名です。」


受付の子が走って俺の元へ来た。


「チーフ、店長休憩ですよね?
指名のお客さんなんでさっきから呼んでるんですけど、内線出ないんです。」

小声で話す。

「え?トイレかなあ?

お客さんに待ってもらえるか聞いてみて。
俺あと少しで空くからちょっと探してみる。」

どうせ、トイレか煙草だろう。


「ありがとうございました。」


お客さんを見送り、バックルームヘと歩く。


「店長〜サボんないで内線出てください…て、アレ?」


いない。

煙草の吸い殻…冷たい、って事は此処にはいないな。

奥のトイレへ向かう。


「店長、店長〜?」

扉を開く。

「いない、な。」


店長、一体どこへ行った?
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