桜が散るように ー 新撰組 ー
キョロキョロと室内を見渡すのも失礼かと思い、桜は閉じられた襖をただただ見る。
(まだかなーまだかなー)
そう思いながら待っている桜は、さながら『待て』を命令された犬だ。
しばらくして
ガラッと襖が開き、盆を持った山崎が現れる。
座り込んだまま、桜は山崎をじっと見る。
「………、犬」
「はい?」
「いや、何でもない、気にするな」
山崎は盆を床に置いて、自分も座る。
盆に載っていたのは
「これ、抹茶ですか?」
桜の言うとおり、抹茶とお茶請けであろう和菓子だった。
「ああ、飲め」
「へ!?の、飲むんですか!?」
「茶を眺めるだけでどうする。作法は気にするな、飲め」
桜は抹茶が入った器を手に持ち
山崎に薦められるがままに一口飲んだ。
「にっ、苦い…」
桜は顔をしかめるが
「濃茶(コイチャ)だからな」
山崎は平然と飲んでいる。