桜が散るように ー 新撰組 ー
濃茶とは
茶を点てる時に、一定量の湯に対して抹茶の量を多くして点てるものである。
反対に薄茶というものもあるが、それに比べるとずいぶん苦い。
桜はどうやってこの苦い抹茶を飲もうか思案していると
「先に、和菓子を一口食べてみろ」
と、山崎が言ったので
桜は和菓子を口に入れる。
控えめで、でもハッキリとした甘さが口に広がる。
「そうしたら、抹茶を一口飲め」
また言われたとおりに抹茶を一口飲むと
「あれ、美味しい…」
先ほどと違い、渋みが強すぎることなく、美味しく感じた。
「お茶請けは、苦みを消すために出されるからな」
「そうなんですか、美味しいです!」
桜はニコニコして、
また和菓子を一口食べて、抹茶を飲む。
山崎はそれを少し微笑みながら見ていた。
そして
桜が抹茶を飲み終えると山崎は真剣な顔をして話し出す。
「お前が、居場所を作ろうとするのは分かる。誰しも居場所は欲しい」
それを聞いて、桜は苦笑して頷く。
「だから頑張るのも分かる。だが、休むときは休め。心を落ち着けろ」
「はい」
「…逃げられないモノに立ち向かわなければならないときは絶対にくる。だから、張り詰めたままでいるな、普段は余裕を持っておけ」
「……はい」
そこで桜は気付く。
落ち着かせるために、お茶を点ててくれたのだと。
結構ムリヤリ飲まされたが
あれは不器用な優しさだと。