桜が散るように ー 新撰組 ー
桜は唇を突き出し、不満を顔に表しながらも話す。
「そういう、人をからかって遊ぶところとか、私のお父さんにソックリです。意地悪いです…」
それを聞いた土方は苦笑する。
ちょっとからかい過ぎたかとは思うが、コレで納得がいった。
桜は他の人に対する接し方が、土方に対するソレとは違う。
土方には遠慮をしてない……というわけではないが、土方以外の人には少し遠慮し過ぎているところがあった。
桜が自分に懐くのは
土方がなんとなく父親に似ていたからだと合点がいったのだ。
土方は苦笑しながら桜の頭を撫でる。
「ま、お前みたいな娘がいたら大変だろうな、桜」
「ちょっ…、どういう意味で……すか……、って、土方さん、今」
「なんだ、桜。なんかおかしいか?」
土方は苦笑から一変、ニヤリと確信犯のように笑う。
桜は一瞬ポカンとした後、花が咲いたように笑った。
「いえ、何でもないです!」
壁が、あると思っていた。
土方は『未来から来たことを信じる』とは言ったものの、副長という立場上、やはり可能性が塵ほどでもある以上は疑わなければならない。
だからなのかは分からないが
ずっと『川瀬』と、呼ばれていた。
なんとなく、線を引かれていると思っていた。
壁があると、思っていた。