桜が散るように ー 新撰組 ー
だが、
今し方、土方の口から出たのは紛れもない自分の名前。
いたずらっ子のように笑いながら『桜』と呼ぶ声はあまりにも優しくて……。
やはり父親みたいだと思った。
「ふふ、やっぱり土方さんはお父さんです」
「あー、そうかよ。ったく、俺はまだ結婚もしてないのにこんなデケェ娘が出来たのか」
「若いお父さんが出来て嬉しいです!」
「……若くはねぇがな」
俺はもう三十を超えてる、と土方が言うと
「……。ぇえええっ!」
桜は大声を上げて驚いた。
「えっ、うそ三十歳!?」
「なんだ悪いか?」
「ちょっ、世の中の三十路が泣きますよ!二十代にしか見えませんもの!」
「そりゃあ嬉しい限りだな」
クックック、と
桜の慌てっぷりに笑いを零す土方。
と、そこに
「副長。失礼します。例の任務の件なんですが………何を笑っているのですか?」
「ん?あぁ、気にすんな」
土方は笑いを引っ込めて山崎と向き合った。